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K様のお通夜での出来事
2008/3/11

施設長 宇都宮 秀子


デイサービスセンター翠風園を4年あまり御利用下さいました、K様という女性の方が病院で亡くなられました。
お通夜には担当だった職員の沼田武さんが行って下さいましたが、その時の様子を翌日聞いて、私も大変嬉しかったものですから、沼田さんに文章にして戴きましたので、ご披露したいと思います。

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K様のお通夜での出来事  沼田

1月31日、私が担当しているK様の通夜が執り行われ、参列して参りました。
まず、受付をすませようと香典をお渡しし、記帳を済ませてその場を離れようと目線を喪主の息子様ご夫妻に向けたところ、ちょうど奥様と目が合いました。
奥様はK様のサービス利用の送迎に伺うと必ず自宅におられ、いつもニコニコと笑顔で出迎えて下さるようなとても優しい方です。
私は一言、御礼を申し上げようと歩き出したところ、御夫妻の方から私のところへ来て下さいました。
そして、奥様から、「あら〜沼田さん。おばあちゃんは『沼田さん、沼田さん』って病院で薄れ行く意識の中、ずーっと名前を呼んでいたのよ。おばあちゃんの顔を見て行って下さい」
そう言うと、私を棺の前まで連れて行って下さり、奥様は棺の中のK様に一言・・・「おばあちゃん、沼田さん来たよ」と話されました。

K様はとても綺麗なお顔でした。
その後、K様の孫娘さん2人が私の方に歩み寄って来られ、1人のお孫さんから「沼田さんですか?おばあちゃんは沼田さんの名前を呼んでばっかりだったんですよ。沼田さんはおばあちゃんの恋人ですから…」と仰って下さいました。
そしてもう一人のお孫さんからは「私が病室で沼田さんの名前を間違えて言ったら、おばあちゃんに訂正されたんですよ」と言われました。再び奥様から、「病室で沼田さんになりきって、『沼田です。また元気になって、車椅子で迎えに来ますから』って言っていたのですよ」と話がありました。
亡くなられた事を連絡して下さったケアマネージャーさんからも「家族が沼田さんになりすまして励ましていたんですって。私もKさんが生きているうちに、沼田さんを病室で会わせてあげれば良かったね」

と、残念そうに話して下さっていたのを思い出し、事実だったんだと感じました。

お経が終わり、帰ろうと親族の方々にご挨拶をしに向かったところ、息子さん御夫妻とお孫さんの計5人に囲まれ、「ぜひ通夜振るまいに出席して行って下さい」と何度も何度も強く勧められたので、それなら少しと思い席に着きました。そこには普段お見かけする事のなかった、おそらく親戚の方だと思われるご夫婦2人が私の側で「ほら、あの沼田さんよ」と、こっそりと話をされているのが聞こえました。
すると、そのご夫婦が私のところへ来られて「お世話になりました」とお礼を言って行かれました。
それから私は緊張しながら少し食事を頂き、「それでは・・・」と帰らせて戴く事にしました。

K様は、私が入社した年に翠風園をご利用された方で、とても話しやすく親しみやすい性格の方でした。
ご生前よく「おめさんの顔見ると、らっくら(ほっ
と)する」と仰って下さったり、K様のご利用日に私がお休みで次にお会いすると「おめさんの顔が、このまえ見えなかったね」と、50歳以上も年の離れた私に気さくに話し掛けて下さっていました。
そこまで心にかけていて下さっていたのかとあらためて感じた事もありました。
このような事を様々と思い出しながら、感謝の想いでいっぱいになってお通夜から帰ってきました。


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と、このような内容を話して下さいました。
私は思わず「沼田さん、K様にお土産を一つお渡し出来ましたね」と言って泣いてしまいました。

薄れ行く意識の中、今際の際まで名前を呼び続けて下さった、そこに込められた想いは「有り難う」ではなかったかと感じられ、利用者様にそんな想いを持って戴けた沼田さんの真心に、大きな成長を感じて胸が熱くなりました。

私もとても嬉しかったものですから、皆様に紹介させて戴きました。

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