2月 節分祭
■旧暦では立春の日が新年にあたる事から、数年前から節分祭を1年の目標を立てる行事として行っております。
■今回の飾りは、まゆ玉をイメージしてピンクと白の紙を丸めて作り、天井全体に飾りつけました。ひと足早い春が訪れたような雰囲気に包まれ、利用者様も「春が来たみたいですね」と喜んで下さいました。
■節分祭当日は、利用者様、入居者様、職員が目標を立て、発表し合いました。これまでは、当日発表する利用者様、入居者様は前列に並んで戴いて、発表のない方々は後列に並んで戴いておりました。その為、後列の方は発表者の背中しか見えない状況でしたので、もっと良い方法がないだろうかと思案したところ、ビデオカメラを活用し、スクリーンに映し出す方法を思いつきました。
■当日発表の様子が、前方の大きなスクリーンで映し出されると、利用者様の間から「あら、私が映っているわ」とサッと背筋を伸ばされたり、「今、あの人が発表しているんだね。内容もいいし、表情もいい人だね」と、次々と声が聞こえてきます。まさに実況生中継ですので、ほど良い緊張感が会場に流れ、職員のカメラワークも抜群で、とても新鮮な節分祭となりました。
■そして、この度は職員の中から特に心に残りました「1年の目標」をご紹介したいと思います。
今年1年の目標 「初心に戻り、基本から学んで行く」
グループホーム 花浅季 計画作成担当者
杉澤 洋子
■私が介護職に就いたのは、今から15年前になります。長いようで、また「あっ」と言う間のようにも思えます。その頃は、介護保険導入前のまだ措置の時代でした。福祉の知識など何もわからず、持ち前のやる気と元気、そしてお年寄りと関わることが好きだという理由で飛び込んだのです。ホームヘルパーとしてスタートした私でした。
■介護の知識や技術は、周りの諸先輩が手取り足取り、実践を交えながらきめ細かに教えて下さいました。初めて利用者様のお宅に伺った時は、どのように接したら良いか緊張と不安で、言葉も上手く出せなかったことを今でも思い出します。
■まだまだ駆け出しの私が、少し仕事にも慣れ、E様のお宅に家事援助として訪問する事を任されました。E様は、両目の視力を失った女性でしたが、掃除、洗濯、料理も全てご自分で行なっておられました。明るく前向きで、はっきりと自分の気持ちを仰る方でした。E様には、家の中全般の掃除と料理が援助でした。
■ある日、いつものように台所で料理をしているとE様が、声をかけられました。
■「ねえ、台所のシンク汚いでしょ?」と尋ねられ、思わず私は「そんなことないですよ、いつもきれいになさっていますよ。」と答えました。
■確かに、目の見えない方ですので、いくらきれいにしたつもりでも、多少の汚れや洗い残しはあります。でもそれは当然だし、仕方のないことだと内心思いました。ところがE様が、急に立ち上がり血相を変えて怒り出されたのです。そして台所まで来られ、いきなりシンクの内側を素手で撫でるように確認されました。厳しい口調で「ねえ、どこ見てるのよっ!やっぱり汚いじゃないの。」そして「私は、あんたにお世辞を言って欲しくて来てもらっているんじゃないのよっ!」とおっしゃるのです。
■ショックでした・・・。厳しいことを言われたからではなく、自分自身が愚かで情けなくなったのです。私は、E様が求めていた事、望んでおられた事を何も解らなかった。それよりも目の見えないE様に対し、驕った気持ちで接していたと思うと、申し訳ない気持ちで一杯になりました。E様は見えない目で、私の驕った内面を見透かしておられたのです。
■恥ずかしい話ですが、私はE様の前で謝りながら声を上げて泣きました。E様も同じように謝りながら泣いておられました。
■しばらくすると静かにE様が「きついこと言って悪かったね。」と言って下さり、おもむろに「私はね、とてもきれい好きだった。まだ片目が見えていた頃は何とかできた。でも、両目の視力を失った今は、いくら頑張ったってたかが知れている。そのためにヘルパーさんに来てもらっているのよ。
■本当に汚い時は、遠慮せず言ってちょうだい。自分では、どこが汚れているのか、お皿一つ何が壊れているのか見えないのだから。私の目になって欲しいの。」とおっしゃいました。
■私は、初めて自分が何の為にここにいるのか、そして何を必要とされているのかをE様から教えていただきました。身を持って教えて下さったのです。
■このことは、私が介護の仕事をする上での原点になりました。
■翠風園で働かせていただき、9年になります。日々、仕事をする上での心得や、感謝の心、魂のケアと様々な事を教わり、人として生きる基本を育てて戴いています。まだまだ成長過程半ばの私です。
■介護経験としては、時間だけは長く過ぎていますが、今年は初心に戻り、基本からもう一度、学んで行こうと思います。あの原点を思い起こしながら……。
■杉澤さんは、翠風園開設の初期の頃から、翠風園の全事業所を経験され、現在はグループホームの責任者として勤務されております。経験豊富な先輩職員の杉澤さんが、ご自分の原点をみつめて、立てられた目標は、私達後輩職員を導いて下さる内容であると思います。
■今年も、自ら立てた目標の実現に向けて、一歩一歩進んでまいりたいと思います。